ガダオさんは、人の気配がなくなった入江を
見つめながら、一人考えていました。
村人達を怯えさせた化け物はまだそこにいて
悠々とひれをひるがえしています。
「村人達のために…」
ガダオさんは拳を握りしめて立ち上がりました。
「私が魚の餌になろう。」
水に入ると一歩一歩魚に近づいていきました。
そして、一気に潜って魚の顔の前に出ました。
魚は、洞窟の入り口のような不気味な口を開き、
ガダオさんを丸飲みにしてしまいました。
ガダオさんが魚に食べられたと、悲しみにくれる村人達。
すると突然巨大な魚が暴れだしました。
海水を高く打ちながら苦しそうに身をよじり、
やがて、動かなくなりました。
ガダオさんはお腹の中で魚と戦っていたのです。
魚の大きな口がかすかに開き、
ギザギザの歯の間からガダオさんが出て来ました。
村人達を困らせた大きな魚はみんなのご馳走です。
「やっぱりガダオさんは強いなあ。」
「ガダオさん有難う。」
おしまい。