昔々のお話です。
イナラハンというとても美しい村がありまし
た。
サンゴ礁の向こうは、激しい波が打ち付けて
いましたが、入江は穏やかで村人達は、
海で魚を獲っては静かに暮らしていました。
ある日、酋長のガダオさんが住む洞窟に村人が慌てた様子で
やって来ました。
「大変です。化け物のように大きな魚が入江に入って来て、
村人たちを襲おうとしているのです。
みんな怖がって漁が出来ません。」
それを聞いたガダオさんは、「私に任せなさい。」と、
大きな釣り針を作り始めました。
何日も何日もかけて立派な釣り針が出来上がりました。
ある晴れた夜、ガダオさんは海へ出ました。
丈夫な釣り糸の先に大きな釣り針を取り付け、
空に振り上げて、大きく大きく旋回させました。
十分に勢いがついたところで、「それっ。」放り投げると、
釣り針は広い夜空に舞い上がり…
そのまま引っかかってしまいましたとさ。